コナミ「カードコネクト」が実はトレカのネットプリントだったという話をダシにアーケードでのオンデマンド印刷の歴史を整理しようと試みる(きっと不完全)

先週末、突如タイムラインにオンデマンドなトレカを刷ったというツイートが流れてきました。


見た瞬間、コナミの「カードコネクト」というカードベンダーに任意の絵柄をアップロードして印刷する機能があったことを思い出しまして、おめがさんにレスしたところみんなでいろいろ調べる流れとなり

  • カードコネクトのWebサイトで任意の絵柄(表・裏・ホログラムのマスク、ラミネートのマスク)をアップロード可能(KONAMI IDログイン不要)
  • 出てきたQRコードをゲームセンターにある「カードコネクト」に読ませると印刷可能
  • QRコードは所有者制限などはなく、画像としてシェアすれば誰でも「カードコネクト」で印刷できる
  • 唯一有効期限が14日と設定されているほか、当然だが他人の権利物は登録禁止
  • 印刷代はホロなし100円、ホロありで300円(現金 or PASELI払い)

とまあ、結構至れり尽くせりの仕様で、いわゆる「ネットプリント」的な使い方ができると盛り上がりました。

で、その中でこういう「ゲームから独立したカードベンダー」の歴史的話題となりまして

なんかの縁だろうしということでちょっと「トレカのオンデマンド印刷」の歴史を調べてみることにしました。
一応タイムラインには雑に書いていましたが、改めて。

前史:印刷済みトレカを使うアーケードゲーム

リアルなトレーディングカードを使うゲーム自体はかなり前から存在しています。
ジャンルの先駆けはセガの「WORLD CLUB Champion Football」(2002年)かと思います。11枚の選手カードをフィールドに直接置いてフォーメーションを指示するなど直感的UIは革新的なもので、このシリーズは2020年のいまでも「WCCF FOOTISTA」として継続しています。
その後もセガは継続的にトレーディングカードを併用するアーケードゲームをリリースします。キッズ向け初のトレーディングカードゲームにして、長期ヒットを生んだ「甲虫王者ムシキング」(2003年1月)や、ファンタジー寄りの世界観と乱入対戦をより全面に押し出すような作りにした「アヴァロンの鍵」(2003年2月ロケテ、7月稼働)がそれぞれヒットします。ただ「アヴァロンの鍵」の方はゲーム性が大概セガセガしく(強制的に対人戦になるうえダメージを受けると直接プレイ時間が縮む。初心者狩りもあった)、当初はウケたものの長持ちはしなかったと思います。
その後、ダンジョンRPGQuest of D」(2004年)ではアイテムを「Dフォースカード」としてトレカ化する試みが行われましたが、デッキのプレイヤー間使い回し、レアカードの払い出し法則が知られたことによる一部ユーザーの張り付き連コ、及び運営の対応のまずさや一部カードの価値が極端に高まる難易度設定のセガセガしさでプレイヤー離れを引き起こしたとされています。

2005年にはWCCFのカード配置を発展させ、カードを直接動かして操作する「三国志大戦」がデビューします。(2005年3月稼働)これも長期ヒットを飛ばし、途中「戦国大戦」(2010年11月稼働、2017年2月サービス終了)として新シリーズに展開したりしながら継続しています。また、バンプレスト機動戦士ガンダム0079カードビルダー」(2004年12月)、スクウェア・エニックスの「ロード・オブ・ヴァーミリオン」(2008年6月~2019年8月サービス終了)など、似たUIを持ついくつかのフォロワーも登場しました。

いずれのゲームでもカードを巡ってのトラブルは少なからず存在しており、「レア抜き」が疑われる事例や特定カードを目当てとした「掘り」などもあったといいます。

オンデマンド印刷へ

ゲームセンターでのオンデマンド印刷といえばアトラスの「プリント倶楽部」(1995年)で既に行われていたわけですが、印画紙印刷をトレーディングカードに応用するアイデアが実際に世に出たのは2012年コナミ「モンスター烈伝 オレカバトル」が最初のようです(2012年3月)。QRコードを印刷し、それを筐体で読むことでカード上のキャラをゲームに登場させられるという仕組みでした。この時点で既にカードとプレイヤーの紐付けがある程度行われており、他人が印刷したカードは「かりモン(借り物+モンスター)」と呼ばれ、使用制限が発生するようになっていました。カード自体の印刷品質は既に十分高かったようですが、紙質はちょっと薄めで、また元がロール紙なので払い出しの時点でちょっと反っていました。後、2015年にはSOUND VOLTEX IIIに「SOUND VOLTEX GENERATOR -REAL MODEL-」というカードプリンタが追加され(2015年3月11日)、ゲーム内の楽曲ジャケットやキャラカードが印刷できるようになりました。中には「PUR」というレアリティ付きのものがあり、これを引き当てるとゲーム内のナビゲーター「ネメシスクルー」を変更できるという趣向がありました。なお、SDVXのカード用紙は当初オレカバトルと共有しており、裏面の柄がオレカバトルのままのカードが出ていたそうです。(2016年頭からKONAMIロゴのみの用紙が出回り始めた模様)

一方セガも同じ2015年6月、既に稼働中だった「初音ミクProject DIVA Arcade Future Tone」に「フォトスタジオ」として印刷機能を追加。こちらは台紙が「シール」になっており、レイアウトを変えることで複数サイズのシールを一気に印刷できるようになっているそうです。PV鑑賞中に複数枚スクリーンショットを取ることができたので、好きな写真を複数並べてまとめてシール化できるようになっています。また、ゲーム内のアイコンやロゴを用いたデコレーションも可能とのこと。このあたりには「プリント倶楽部」の息吹が感じられます。

セガのオンデマンドトレカ印刷としては2016年の「艦これアーケード」(2016年4月稼働)がその発端でしょうか。印刷のベースとなるカード自体がICカードになっており、反りの無い高品質な出力、さらにホロの印刷にはじめて対応しました。また他人のカードであっても使用制限が緩いようで、カードショップでの中古市場ができあがり、いわゆるSSR的立ち位置である「中破ホロ」(キャラ絵が中破絵のカード)はそれはもう高値での取引がされているとかなんとか。

同じ2016年12月には「三国志大戦」の第2期が稼働開始。こちらのオンデマンドは両面印刷に対応しており、これまでの三国志大戦同様に片面にイラスト、もう片面で各種情報の記載がなされるようになっています。こちらの使用制限は比較的厳格で、筐体でのトレード機能の範囲でしかトレードもできず不評を買っていたようです。後に改善され、今はトレードの健全さと自由度がある程度両立されているようです。また、ICチップでは無く特殊インクによるコード印刷が使われているらしく、どうしてもカードを擦る事の多い三国志大戦においてはカードの耐久性が問題視されています。対処としてはスリーブを装着するしかないのですが、万が一に備えカードの再印刷が機能として備え付けられています。

独立ベンダー化

セガのカードメイカ

2018年7月に「maimai」「CHUNITHM」に続くセガ音ゲー「オンゲキ」が稼働開始。同時に「カードメイカー」という独立したカード販売機が稼働を開始します。
カードメイカーの当時の機能としては、

  • オンゲキで入手したデジタルカードを実際に印刷して入手する「カードプリント」
  • オンゲキで使用できるカードをガチャって印刷する「ガチャプリント」

の2つで、あくまでもオンゲキの補助という立ち位置のものでした。
オンゲキはゲーム中に入手したカードでデッキを構築し、そのデッキの「攻撃力」とプレイ精度で音ゲーのスコアが決まるシステムです。(デッキに関係ない精度のみで決まるスコアも別途記録されます)
で、ゲーム内で入手したカードをカードメイカーで「印刷」するとレベル上限が解放されデッキ強化が促進されるというシステムになっています。(オンゲキPLUS以後はゲーム内アイテムでもレベル解放可能)
ところが、初代オンゲキは本当にカードを印刷する以外のカード強化の手段がなく、カードメイカーに100円を払わない限りデッキ強化がすぐ頭打ちして解禁が止まるため、補助的な立ち位置に見えて実際は使用必須同然の作りになっていました。
「ガチャプリント」も初代オンゲキでは曲者で、正直ガチャ引かないと後半の解禁、というかTitaniaで勝つ戦力作るのが大変という事がありまして……(実際はゲーム中で入手できるカードやイベントの報酬を集めればある程度戦力はまとまるが、イベントを走るコストやカード入手までのプレイ曲数考えたらガチャに走った方がマシという可能性があった)初代オンゲキはまあ大概セガセガしいゲームでした。「オンゲキPLUS」「~SUMMER」と急激に改善されて今では相当楽になってます。

後、2018年10月からは「CHUNITHM AMAZON」がカードメイカーの対応機種に追加されました。こちらはガチャがメインとなっており、

  • ゲーム本編で入手不可になったキャラをガチャで引く
  • あるいはガチャ限定のレアキャラを引き当てる

という趣向になっています。カードを引いた時点でaimeアカウントで関連付くCHUNITHMのゲームデータに保存され、QRの読み取り等もなくゲームで使用可能になります。
もう一つ特徴的なのは印刷されたカード自体を使って遊ぶ「チュウニズム大戦」という遊び方の提案がなされているところにあります。

2019年7月には「maimai でらっくす」が稼働しカードメイカーと連動を開始。こちらでは解禁促進や上位難易度のプレイ制限撤廃などの効果がある「でらっくすパス」を購入する形になっており、カードの印刷=パスの購入となります。特にガチャ要素はありません。

コナミのカードコネクト

で、コナミの独立型カード販売機である「カードコネクト」ですが、2019年12月23日に稼働開始します。
カードメイカーの後追いという形での稼働ではありましたが、両面をオンデマンド印刷可能とスペックもカードメイカーより上、ついでに対応機種数も圧倒的で

と、あらかたの現行コナミコンテンツは大概対応しています。
ただ、対応具合はまちまち、というかそもそもゲームと連携していないヤツも多く、ポップンDDRボンバーガール、エルドラクラウンやキャラコンテンツの場合は事実上ただのカードダスです。
SOUND VOLTEXのガチャについてはゲーム機でのオンデマンド同様「PUR」を引けばネメシスクルーが解禁されます。それ以外の場合はアピールカードが解禁されます。

珍しいのは「プロフィールリント」と「メモリアルプリント」で、ゲーム機のプレイデータを元に名刺のようにプロフィールを印刷したり、なんらかのメモリアルを達成した記念のカードを印刷することができます。
プロフィールの方は名刺サイズなこともあるので交流会での名刺交換に使うという手もありそうです。(量産するには高いけど)
メモリアルについてはまだ「beatmaniaIIDXの段位突破記念」と「麻雀格闘倶楽部のプロ本人マッチング記念(またはプロ勝利記念)」しかありませんが、一種のリアル記念品になるので面白いと思います。

そんなわけで稼働当初は新機軸はあれど、セガのカードメイカーの後追いという印象は拭えず微妙なところだったのですが、2020年3月25日になって突然「オリジナルプリント」がリリースされ、「トレカのネットプリント」という新たな役割が立ち上がったのでした。

まとめ

2002年ぐらいから始まったリアルトレカを用いるアーケードデジタルゲームの流れはロングランシリーズを複数生む大ヒットになりましたが、リアルカードであるがゆえにゲームセンターでのトラブルが絶えず、カードのオンデマンド化は強力なトラブル解決策となりました。
2012年に業界初のオンデマンド印刷採用TCGが登場。最初はフォトプリンタをベースとしていたようですが、後にトレカサイズの専用用紙や、ICチップを埋め込んだカードが作れるようになり、急激にクォリティも向上、オンデマンド印刷のカードゲームも一般化しました。
音ゲーとリアルトレーディングカードの融合を試みた「オンゲキ」&「カードメイカー」はカード生成が必須すぎる仕様が不評で軌道修正。そこに後追いとなったコナミはゲームのプロフィールやメモリアル要素を前面に出した「カードコネクト」を展開、さらにユーザーによる完全データ入稿さえ受け入れる「オリジナルプリント」を開始して大きく差別化しています。BEMANIコナミ製品のあるゲーセンなら高確率でカードコネクトがあるという、意外と高い普及度も見逃せない可能性があります。
今後はどうなるんでしょうか、ベンダーが独立して存在することで、ゲーム筐体への追加装置を入れずともカード絡みの追加コンテンツを用意出来るわけですが、まあ、最後にはガチャなんですかねやっぱし……ただメモリアルプリントなどガチャだけでない使い方が模索されてるのはいいことだと思います。