フォントバカとしてmojimo-gameがどれだけ神なのかを語る
今日(2018年12月6日)の18時ごろ、フォントワークス社からインディゲーム開発者向けフォント提供プランとして「mojimo-game」が発表されました。
元々デザイナー・イラストレーター・同人誌作家向けとして提供されていた「mojimo-manga」をゲーム制作者向けにパッケージしたもの、という感じですが、とにかくかつてない低価格なのにメチャクチャ緩いライセンスとあまりに至れり尽くせりなので勢い余って紹介エントリを書くことにしました。
ちなみに自分は2012年に開催された全ゲ連という勉強会で「あたしってフォントバカ」なる出落ちみたいな題名でゲーム組み込みのフォントについて紹介しております。残念ながら当時のスライドは見つかりませんでしたが、そのときの講演のメモを公開されている方がいらっしゃったのでリンクしておきます。このメモでスライドの内容をほぼ網羅してるいかと思います。
で、何がそんなに至れり尽くせりなのか
とりあえずmojimo-gameの使用許諾を読んで欲しいわけです。
注目は以下の部分。
フォントを画像化してコンテンツ内で表示 ○
フォントを使用したゲームを日本国内/海外で販売する ○
ゲームプレイヤーの文字入力が可能な部分で使用 ○
フォントから抽出したアウトラインデータのままで使用 ○
フォントファイル自体をゲームプログラムで使用 ○
キモは後半の三行です。プレイヤーの文字入力に使えるのみならず、アウトラインデータのまま使用すること、フォントファイル自体をゲームプログラムで使用することが許諾されるのは大変貴重といえます。これが年額4800円とかマジありえん。
主立った他の定額制フォントサービスと比べてみます。
ブランド名 | 費用(1PC/1年のとき) | フォント数 | ゲームでの利用 |
モリサワパスポート | 初年49,800円、更新48,000円 | 1000以上 | 画像化可、実行時組み替え不可、ユーザー入力不可、フォント組み込み不可 |
Morisawa App Tools ONE | 年額72,000円 | 341 | 画像化可、ユーザー入力可、フォント組み込みも可、 ただしAPP STOREⓇ、Google PlayⓇで配信されるものに限る |
ダイナフォント DynaSmartV | 年額41,500円 | 1882 | 画像化可、ユーザー入力不可、フォント組み込み不可 |
ダイナフォント DynaSmartV ゲーム拡張オプション | DynaSmartVの契約 +年額30000円 |
1882 | 画像化、組み込み、ユーザー入力可 |
フォントワークスLETS(ゲーム業界プラン) | 入会金30,000円 年額36,000円 |
日本語528+欧文5723 +その他言語100ぐらい |
画像化可、ユーザー入力は場合により可、組み込み不可 |
フォントワークスLETS (ゲーム業界プラン拡張ライセンス) |
LETS(ゲーム業界プラン)の契約 +年額100,000円 |
LETSと同じ | 画像化、組み込み、ユーザー入力可 |
フォントワークス mojimo-game | 年額4,800円 | 12 | 画像化、組み込み、ユーザー入力可(LETS拡張ライセンスと同じ範囲の許諾) |
年額7万以上が普通という中、mojimo-gameがいかに衝撃価格なのかがよくわかると思います。
特に昨今はゲームエンジンの台頭もあってUI用にフォントを組み込むのも一般的な選択肢になりつつありますし、フォントファイルそのものの組み込みが許諾されているのは非常に強いと思います。
使えるフォントはどうか
さて、いくらライセンスが緩くてもフォントの選択肢が狭ければ意味がありません。mojimo-gameで提供されるフォントは12種、他の定額制フォントサービスと比べると1桁2桁少なく微妙に見えるかもしれません。
しかしこのライセンスで特に許諾されることがらを考えると、12種類のフォントの「選ばれし者」感が判っていただけるのではないかと思います。ざっくり各フォントの見どころをご紹介します。
UD明朝-M / DB
ユニバーサルデザインとして可読性を高めた明朝体。フォントワークスといえば筑紫明朝やリュウミンですが、特にディスプレイでの表示にも向くUDに絞っての収録です。ノベルゲームのテキストとしても好適でしょう。
ニューロダン-M / B
ゴナとか新ゴとかあのあたりに近い今時のゴシック体枠。FF15の日本語テキストがこのフォントらしいです。メインのフォントとして使ってもよし、B(ボールド)なら加工してテロップなどにも使えるでしょう。
UD丸ゴ_スモール-M / B
丸ゴシック枠。元々フォントワークスLETSにはスーラという丸ゴシックがありますが、より字面の大きいUDの方がゲーム向きでしょう。これと別に「UD丸ゴ_ラージ」もあるんですが、こっちは枠一杯にツメた見出し向けの書体。本文として長く読むにはUD丸ゴ_スモールがいいでしょう。ゆるめのノベル、アドベンチャーゲームのテキスト、システムメッセージなどでもよさそうです。
セザンヌ-M
昔ながらのゴシック体枠。システムメッセージなどに加え、取扱説明書などの印刷物にもよさげ。これだけ1ウェイトのみ提供ですが、ボールドが欲しかったらニューロダンを選んでもいいんじゃないかな。見出しニューロダンB、本文セザンヌでも良い感じだと思います。
ハミング-M、スキップ-M
ちょっと小洒落た感じの文字・デザイン系枠。明朝とゴシックのあいのこみたいな感じ。確かFate/Grand Orderの各種メッセージがスキップ-Bあたりを使ってたんじゃないかなと。ファンタジーもののシステムフォントに合いそう。ハミング-Mはスキップの角を丸くした感じ。ゲームの雰囲気に合わせて選びたいところ。
ドットゴシック16-M、ドット明朝16-M
ドット絵・デザイン系枠。レトロっぽいゲーム感出したいときにはいいんじゃないかなあ……ドットバイドットにしづらい印象があって殆ど使ってません( 正直ドット文字は自家製フォント工房さんとこのKHドットフォントと自家製ドットフォントシリーズが強い(バリエーションもライセンスも)ので……
コミックレゲエ-B
インパクト・デザイン系枠。12書体で明らかに異彩を放つとんがったフォント。確かタイトーのLeft4Dead(アーケード)のメインのフォントがこれだったはず。テロップでドーンと使うのには一番向いてそう。
というわけで、ゲームのシステムメッセージやノベルの本文などに使える「明朝体」「今時のゴシック」「昔ながらのゴシック」「丸ゴシック」が一揃いあることに加え、装飾したりアクセントとして使える「デザイン系」もざっくりではありますが揃っているということで、通り一遍のゲーム制作ではまず困らないんじゃなかろうかと思います。本当に絶対必要なものだけに絞った感じが「選ばれし者」感というわけです。ドットフォントはやや微妙だけど
買うべきか?
ゲーム制作者なら買って損はしません。特にUnity、UE4など「フォントを組み込めるゲームエンジン」を使っているならフル活用できるでしょう。ローレゾ表現・ドット絵が主戦場の方は若干厳しいかもしれませんがまあまあ使いどころはあると思います。
LETS契約済みの方は「LETS拡張ライセンスのフォント限定版が95%OFF」と考えましょう。フォントは大きく限定されるものの、上記の通りこのライセンスが必要になるような局面には必要十分なフォントが揃っています。
というわけで画像も貼らず勢いだけで書いてしまいました。完全に早口で推しを語るヲタク状態ですが何かの参考になれば幸い。
そのうち画像とか増やすかも。